森研究室   相模女子大学 社会マネジメント学科/社会起業研究科

 
 
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■コンサルティングと事業開発

 1984年4月に株式会社野村総合研究所に入社して以来、マネジメントコンサルティング、経営企画、新事業開発の各業務に従事してきた。

1)経営戦略・マーケティング戦略関連リサーチ・コンサルティング

 商品開発、チャネル開発、経営戦略立案、経営計画策定に関連するリサーチとコンサルティングを多数実施した。主な分野は、医薬品、通信サービス、地球環境対応、自動車、エネルギー、不動産、大学などである。
 通信に関しては、郵政省(当時)のODAミッションに随行し、フィリピン、スリランカでのニーズ調査を実施するなど、国際的視点からの業務を行った。(その他海外調査地は米国、台湾、韓国)
 成功事例としては、初年度数十億円の規模となった医薬品の商品開発、通信サービスの営業戦略提案とトップシェアの奪還、大手流通のPBに関する地球環境対応基準策定、大手自動車メーカーの商品戦略提案、などである。
 手法としては科学的マーケティングを重視し、リサーチをベースとした定量的分析に基づくコンサルテーションを得意としている。また公的企業や大企業など、経営環境としての社会一般への適応が重視されるマーケティング戦略立案も多く経験した。

2)経営企画業務

 2004年から2年間、企画部に所属した。
 株式会社野村総合研究所の全社経営戦略策定を行った。主な業務は中期経営計画策定や経営会議支援である。
 また各種制度設計を行った。具体的には新規事業開発のための社内ベンチャー制度、顧客満足度向上のためのCS調査等である。

3)新事業開発・運営

 1995年以降、自ら多くの新規事業を開発し、運営した。主なものとしては、日本初のクレジットカード決済可能なショッピングモール「電活クラブ」(1995年)、デジタルコンテンツ課金サービス「P-Click」(1996年)、インターネットでのビジネス実験場「サイバービジネスパーク」(1996年)、である。
 これらの活動の一環として開発した約款は、ECOM(次世代電子商取引推進協議会)等を通じて日本の業界標準として採用された。
 また新事業開発・運営で得た知見を元に、顧客企業向けにコンサルテーションやシステム開発を実施した。たとえば、ショッピングモールと決済サービスの企画・構築・運用(クレジットカード・都銀、1997年、1998年)、個人信用情報のオンライン開示実験(1998年)、ECサイト構築(電力会社、新築マンション分譲・サプリメント・時計メーカー他、1999年)、大学の授業評価システム構築(2003年)。
 近年ではヘルスケア領域での新事業開発を実施中である。
 なお実務に関連して知的資産を開発し、各種のビジネスモデル特許出願を行った。「適合商品推奨システム及び適合商品推奨プログラム」、「広告用キーワード抽出システム、広告文配信システム、広告用キーワード抽出プログラム及び広告文配信プログラム」、「携帯電話を利用した授業評価システムにおける不正入力防止の仕組み」、「アンケート処理システム及び方法」、「カリキュラム解析システム、及び方法」である。


■研究活動

1)経営戦略論、戦略的マーケティング

 修士課程においては、公開財務データの分析から、業界環境が経営行動に与える影響を定量的に分析し、経営環境適応のモデル化を行った(「経営戦略の環境適応」)。この知見は、その後のリサーチ・コンサルテーションの実務における経営コンサルティングに応用されている。

2)ブランド論、マーケティングコミュニケーション論

 博士後期課程においては、「ブランドマーケティングにおけるネットコミュニティの活用」を研究テーマとした。本研究の目的は、ネットコミュニティをマーケティング・コミュニケーションのツールとして活用するために、ネットコミュニティ参加の要因、ネットコミュニティの知覚品質とその構造、ネットコミュニティのブランド態度形成効果、という3つのメカニズムの検証を行うことである。
 マーケティング・サイエンスの分野の研究であり、統計モデル化とアンケート調査をもとにした消費者行動の分析が主な手法である。
 マーケティングコミュニケーションのツールとしてのネットコミュニティには、口コミ、ネットマーケティング、ブランドマーケティングの3つの側面がある。@口コミ情報には「客観性」があり、発言を読む人との「類似性」の認知があるために、ブランド態度形成に対して効果的である。Aインターネットの本質的特長は双方向性であり、「ワントゥワン」でのアドバイスが可能であるがゆえにブランド態度形成に対して効果的である。Bブランドマーケティングにおいてはブランドに対する「共感」から「強い態度の形成」が可能である。従来はこの3つの分野はそれぞれ別の発展を遂げてきたが、ネットコミュニティによって3分野の効果を統合し、ブランド態度形成の統合モデルを構築することができる。同時に消費者と企業の境目をなくした、新しい企業モデルを構想することもできる。
 この研究の学術的貢献は、第一に、口コミ情報の信憑性を規定する要因として、従来は送り手と受け手の個人差要因による説明を行った研究がほとんどであったが、ネットコミュニティの知覚品質という状況要因が重要であることが判明したことである。第二に、従来から口コミはコントロールが困難であるとされてきたが、ネットコミュニティにおいて、ルールとツールという場のコントロールによってコミュニケーションの促進が可能であることを実証した。第三に、精緻化見込みモデルでは、口コミによる態度形成は短期的で弱いものであるとしているが、ネットコミュニティでは「中心的ルートによる態度形成」と「周辺的ルートによる態度形成」の両方が同時に実現しており、結果的に強くて長期的なブランド態度の形成が可能であることが判明した。

3)参加と共創・DART・経験価値、意識と無意識、ICカード、健康行動、ブランド物語と共感、自己効力消費と自己効力物語

 ネットコミュニティの研究は、その後いくつかの流れに分かれて続いている。
 ブランディングのためにはDARTと経験価値の充実による参加型マーケティングが有効であるとの仮説に基づき、様々な商品カテゴリーに属する10のブランドでその構造を実証した(機能ブランド、イメージ・ブランド、経験ブランド)。
 ブランド選択では意識化の程度が様々である。意識と無意識の問題について、脳科学的な関心を持っている。
 ブランドとは関係がないと思われがちなICカードでも、地域ブランドや企業ブランドが重要であることを実証した。
 食事と運動に関する健康行動において、集団の効果が大きいことを実証した。その集団への加入においても参加と共創が重要であるとの仮説に基づき研究を続けている。
 IT企業や女子大のブランド物語が共感を喚起するメカニズムについて研究している。
 物語が自己効力感を促進する可能性について、女子の大学進学や社会人の大学院進学について研究している。
   
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